たばこ離れは加速化し,葉たばこ農家の経営も深刻に
葉たばこの生産を続けてきた彼も,もう70歳を超えた。
「息子は会社勤めだし,このまま続けても仕事の割にはカネにならない。ただ,新しい機械を買ってまだ5年だしなあ…」
この8月,JT(日本たばこ産業)は葉たばこ農家の約1/2(作付け面積のほぼ1/3)の廃業を目指し,廃作希望の募集を開始した。たばこ産業は,このところの若者のタバコ離れもあるが,「健康増進法」による公共スペースをはじめとする様々な場所での禁煙の義務づけにより拍車がかかり低迷の一途をたどっている。昨年のたばこ税の増税も大きな打撃だったという。
「今も皇室のおみやげは菊の御紋の入ったタバコなんだけどな。今は嫌われるばかりでいいこと無いよ。それに,ここはローム層だから葉の育ちが悪くて,ある程度カネを取るにはかなりの面積をつくんなくちゃなんねえしな。」
たばこをうまそうにくゆらす彼はなんとも複雑な表情だ。良質なたばこの生産が行われているのは青森・岩手・福島を中心とする東北と熊本・鹿児島・宮崎を中心とする九州である。その中間にある関東の葉たばこはあまり良質ではない。肥料をやりすぎると葉の大きさが大きくなるばかりで,肝心の肉厚は厚くならないという。
「昔はよかったよ。大人はたばこをみんな吸ってたからな。なにせ,お国の買い上げだから,作れば作っただけ買ってもらったよ。今だって不作の時は補償もあるしな」
葉たばこ農家が生産するたばこは,たばこ耕作組合とJTとの売買契約により,すべてが買い上げられる。種もJTから無償で配布され,出荷の経費も助成がある。また不作の時には災害援助金が支払われるというから,かなり手厚い援助がある。さすが元国営公社である。だが,このところの嫌煙により生産農家が激減。バブル当時に比べると農家は半分以下の42%程度に激減した。収量も3割減少している。
「オレももう70過ぎたしやめる時かもしんねえな,JTからも廃作のたよりが来たしな。JTの方針も年寄りには止めてもらって若手育成の方向だからな…。」
今回の廃作希望は,60歳以上で作付け面積が少ない農家が対象となっている。JTとしては,たばこ産業の先行きが不安であるとともに,後継者が少なく高齢者に頼る耕作にも不安があるということか。JTでは生産農家の減少と併せて若手耕作者の耕作面積の拡大を進め,その結果一人当たりの作付け面積はバブル期の1.6倍に増加した。JTは「価格が安定し収益性が高いとして新規就農の呼びかけにやっきだが…。
「米も食べる人がいなくなってんだから,たばこはそれ以上だよ…」健康を謳う雑誌を紐解けば,ガン・気管支への悪影響,さらには胎児への影響などネガティブな情報ばかりだ。ストレスにさらされる現代人には格好の一服とはならないのが現実か…。
もっとタバコの市場も値引きなどして、自由競争にしてはどうだろ?
健康に配慮している事。天皇陛下ご自身が、お吸いにならない事を理由としたと記憶しています。