前回のエントリー筋弛緩剤事件控訴審について、
元検弁護士のつぶやき(ヤメ検弁護士兼ロースクール教員の矢部善朗)の矢部氏から非常に重要なTBをいただいた。前回の記事を書いた関連サイトと矢部氏の見解及びasahi.comにおいて掲載されている「
筋弛緩剤事件公判」の記録を比較してみると、「えん罪」であったかどうかについて非常に疑問を持ってしまったので、再考のうえエントリーしておくことにした。
この裁判で問題になっているのは矢部氏いう「証拠開示の問題であり、取調べの可視化の問題」である。
自白は自発的だったのか強圧だったのか
自白に関しては報道ではかなり早い段階で自白していると検察は主張。
公判で捜査員は「被告は、本格的な取り調べが始まって数分で『患者の点滴に筋弛緩剤を混入した』と認めた」と証言しているが、守君は「刑事に『お前がやったんだ』と何度も怒鳴られ、『じゃあ、間違ってやったのかな』という気持ちになった」証言する。そして守君は弁護士との接見後否認に転じるのである。
自発的であれ強要されたものであれ、供述調書には「自白」されていることが書かれているということだが、わからないのは「自白」の強要なのか、「自白」後の犯行の供述が強要なのかである。これは些細な問題かもしれないが、「秘密の暴露」が無く、検察側ですら筋弛緩剤の投与方法などについて信用できないとしていることから公判ではもっと突っ込んで検証できなかったものか不思議に思う。もっとも、可視性のない取り調べ状況であるから検証自体が難しいのかもしれないが…。
矢部氏も書いているが、今後裁判員制度が本格的に運用されるのであれば取り調べの可視性は重要である。このIT時代に未だ録画もされていないということは、普通に考えれば警察が「都合が悪くなる」ということであって、これが密室における取り調べの不可解さを煽り立てているような気がする。さらに言えば、以前
ミランダ警告について触れているが、こういったことが示されていたとしたら、守君の自白はどうだったのか考えてしまうのだ。
事件はでっち上げだったのか
自白はともあれ、守君の弁護団の言うとおり「事件は全くのでっち上げ」なのかどうかについてである。公判記事をすべて読み終えての心証は「これほど大規模なねつ造は不可能に近いのではないだろうか」というものだった。最大の問題とされた物証=鑑定資料がすべて科捜研で消費されてしまい再鑑定ができないという点。これは鑑定の専門家の善意に基づいた鑑定によるものであり、この点を突いて「ねつ造」とするにはどう考えても無理がある。意図的に証拠を消滅させていたのだとしたら、検察の筋書きは完璧すぎる。次々と登場する検察側の証人をすべてマインドコントロールする、そんなことはありえない。
155回に及ぶ公判のなかで、膨大な証拠調べ、証人喚問を実施してきたが、検察にはほとんどブレが見られない。反対に弁護側が鑑定書に押印があるかどうかといったことを取り上げ、状況が悪くなると取り下げしているといった検察ねつ造説をしきりに主張していることもわかった。物証の無い、状況証拠の積み重ねでの立証であったが、asahi.comの記録を見る限り「事件はなかった」というはずはない。少なくとも各患者からマスキュラックスが検出されているのは事実であるし、何者かが何らかの意図も持って投与したとしか考えられない。それを全てにわたって警察が行ったという合理的な論理は組み立てられるはずもない…。
高裁への批判はどうか?
さらに、控訴審がたった4回、4ヶ月。これは実際の数字であるが、このことについて矢部弁護士は
…、仙台地裁の一審は2001年7月11日の第一回公判から2004年3月30日の判決公判まで約2年9カ月が費やされ、その間、証拠調べ期日が150回近く開かれています。
これはかなり充実した審理が一審で行われたと言っていいでしょう。
そして控訴審は期日こそ4回程度しか開かれていないようですが、1審の判決から2年近くが経過しており、その間仙台高裁において膨大な訴訟記録を精査していたものと考えられますから、仙台高裁の審理は必ずしも拙速とは言えないと思います。
一部新聞等で報道されたスピード審理とは全く異なった感想を述べている。法律家の視点からこの控訴審を判断したもので、我々一般人にはわからないことを実に明快に説明してくれた。
拙速なエントリーは素直に反省
今回矢部弁護士からTBをいただいたことは、たいへんありがたいことだと感じた。いかに情報に接することが難しいのか、そして、ジャーナリストはどこまで求められているのかについて、たいへんい勉強になった。このような拙速なエントリーを公開したことについても反省せざるを得ない。
「僕はやってない」とあくまでも無罪を主張する守君を、この弁護団はどこまでサポートしていけるのだろう。
私のブログを取り上げていただきありがとうございます。
この事件に関して、報道された限度での情報に基づくものでありますが、守被告の自白についての検事的感覚から見た検討を書いてみました。
おそらく裁判所も同様の見方であろうと思います。
守被告の自白は三日間という短期間の、しかもいくつかの手続の間隙に得られたものですから、具体性も詳細性も十分でないものと思われますが、裁判所の犯人性の認定にはほぼ決定的な意味を持っていたものと推測しています。
報道された判決要旨によれば、判決が「一定の信用性が認められる自白」と言っているのは、犯人性の認定の限度で信用性が認められる、と言っているものと解されます。
私がブログで述べましたところは、言うならば職人芸的判断なのかも知れませんが、検事や刑事裁判官にとっては一般的な感覚であろうと思います。
また、普通の感覚ですと、控訴審とは「裁判のやり直し」という様に捉えているのが現実です。今回はたいへん示唆に富んだ話題を提供いただき感謝しております。
なお、以前のエントリーについて参照していただいた皆様には、お詫び申し上げます。
守大助さんから社会へ向けて発信するよう依頼を受けているメッセージを添付させていただきます。
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「自白」
初めまして。私は仙台北稜クリニック事件(筋弛緩剤事件)で冤罪に問われている守大助です。
私はやってもいないことを認めました。これが恐ろしい殺人事件になると思いもしなかったし、まして5年以上も世間から隔離される生活をするなんて全く思いも、考えもしませんでした。
私の父親は宮城県警察本部・警察官です。(今年3月定年)小さい頃から、警察官という仕事を知っているつもりでした。捜査して、ちゃんと両方から話を聞いて調べる、そして逮捕するんだとばかり思っていました。
私が「自白」したという件は、11歳女児の件だけ。平成12年10月31日に入院して急変した患者です。対応したのは半田郁子医師と、結婚を約束して一緒に生活していた彼女である看護婦と私です。急変原因が分からないが、植物状態になってしまったのは、半田医師のラリンゲルチューブ挿管のミスでした。この事は間違いない事実です。私も彼女も見ている介助しているのです。だから私たちは、患者の家族が北稜を警察に訴えたと思っていました。患者の両親は医師と看護婦ですので当然だろうと思っていた。
平成13年1月6日に婦長と刑事2名が来ても、ドキドキとかなかった。父の同僚なので親近感を私は持ってた。”A子ちゃんのことで今日は2人に話を聞きたい”と、私たちは協力しましょうと、ミスしたことを伝えようと確認したのです。
2人は別々に移動したのですが、私が疑われていると思えなかった。地下の狭い取調室で担当のS刑事から、”急変原因を知っているのはお前だ”とガンガン言われるのです。私は急変原因なんて分からないこと、事実をありのまま伝えた。挿管ミスで現在の状態になったことをです。全く私の説明聞こうとしない。ポリグラフ検査を受けさせられ、直後からは”お前がやってるんだ”と怒鳴って言ってくるのです。
私には現実感がないのです。撃たれた・刺されたとかというのがあればまた違うのだが。病院で急変・亡くなるというのはおかしいことではありません。なのでいくら”お前だ””マスキュラックスで”と言われても結び付かないんです。怒鳴ってガンガン言われるのが嫌になった。彼女も私と同じように調べられていると思うとかわいそうだと思ったんです。女性ですから。
S刑事にいくら知らない、分からない、やってないと言っても聞いてもらえず、急変した時にいた者がやったのかとも言いしまいには”お前じゃなければ彼女を逮捕する”と言うのです。もう私はかんべんしてほしいと思った。だんだん怒鳴られていると、処置の時間違ったのかと思うようになり、確認ができないので判断もできなくなった。”どうせやってもいない事ですので調べれば分かる”と思ったんです。刑事が半田にも聞くだろうと思った。私は怒鳴られるのに耐えられなくなってしまい”間違って注射した”と。しかしSは違うと。分からないと言うと、アドバイスくれるんです。その時なんかしていただろうと。こうして点滴へ入れたという文ができたのです。これが自白と本当に言えますか。私は方法を知らないです。
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支援組織である「守大助さんを支援する会」は以下の呼びかけを行っています。
1.最高裁あて上申書の提出と署名集めにご協力ください。
http://www17.ocn.ne.jp/~kyuuenka/0608zyousinnsyo.pdf
http://www17.ocn.ne.jp/~kyuuenka/0606saikousai.pdf
2.最高裁に要望を送ってください。
要望先 〒102-8651
東京都千代田区隼町4−2 最高裁判所第3少法廷
裁判長 藤田宙靖 殿
3.大助さんに激励の手紙を送ってください。
また現在、私は主に東京で支援グループの結成を呼びかけています。
ご参加いただける方はご連絡ください。
<本件参考サイト>
○日本国民救援会宮城県本部 守大助さんを支援する会
http://www17.ocn.ne.jp/~kyuuenka/sub001.html
○asahi.com 本裁判の全ての公判取材記事が読める。
朝日記者からもかなりの決定的な疑問点が提示されている。
http://mytown.asahi.com/miyagi/newslist.php?d_id=0400017
○テレビ朝日「ザ・スクープ」 取材VTRを3本見ることができる。
http://www.tv-asahi.co.jp/sco
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/
大助さんの連続メッセージも掲載してあります。
一番読んでいただきたい事件詳細部分が、調整中のため未公開になっていますが、3/19前後に公開予定です。
その頃にもまたぜひのぞいて見てください。
本事件(事件ではない!)は120%間違いなく冤罪です。
警察の思い込みとずさんな捜査によって作り上げられたでっち上げ事件です。
高裁の控訴棄却から1年が経ち、いつ判決が出てもおかしくない状況です。
前途ある無実の青年に「無期懲役」などを確定させないよう、
どうか皆様のご協力をよろしくお願い致します。
その確証にいたる経過というのはどういったものなのでしょう。裁判の経過をasahi.comが伝えていますが、弁護団の論証が極めて弱いのが気にかかります。
もちろん裁判資料も一通り読んでいますが、それだけでは「120%」にはなりません。
「無実の守大助さんを支援する首都圏の会」HPに、
・4・28阿部弁護士を招き質疑応答勉強会のお知らせ
・事件詳細解説ページ(「ここがおかしい!北陵クリニック事件」)
・3・19に行われた支援集会の様子
・大助さんからのメッセージ4〜6通目
等を追加しましたので、ぜひご覧下さい。
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/event2.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/unfair.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/record.htm
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/message.htm
冤罪の構図は既に明らかになっています。
詳しくは弁護団が最高裁へ提出済みの「上告趣意書」に分かりやすく解説されていますのでぜひご覧ください。
http://www17.ocn.ne.jp/~kyuuenka/sub06.html
仙台・北陵クリニック(筋弛緩剤点滴)冤罪事件の
学習・支援集会を行います。
お近くの方はぜひお出でください。
〜仙台・北陵クリニック冤罪事件〜
守大助さんを支援する湘南学習集会
6月12日(火)18:30〜
藤沢市民会館(神奈川県藤沢市)
http://homepage2.nifty.com/daisuke_support/event3.htm