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評価:
重村 智計
講談社
¥ 756
(2008-08-19)
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金正日の同行が取りざたされている。北朝鮮最大のイベントとも言える朝鮮労働党創建63周年に姿を見せず,金日成総合大学の創立62周年にはサッカーを見に来たというが,全く映像が無い。あやしい。
このところメディアでは重病説が幅をきかせているが,重村先生によれば既に死亡,影武者ダブル説で集団指導体制とぶっ飛ぶような話しが書かれている。しかしこれらの話しは,先生が長期間かけて培ってきたネタもとからの情報であり,以前からの情報の真実性を考えれば一笑に付することはできない情報のようだ。メディアでは「たかが日本の一学者が何を」という論調もあったが,これこそ総連の言いなりといった好例だろう。本書では,写真や声紋分析といったところからの真実性も明らかにされる。
一貫して北朝鮮をウォッチしてきた先生によれば,既存メディアはまったく話しにならない総連御用新聞という体たらくだ。先生が何を訴えたかったのかというと,実は最初に触れられているように情報分析とリテラシーの問題だろう。いかに北朝鮮外交がしたたかであるかは,例えば拉致問題延期にしても核施設の査察にしてもいかに北に振り回されているかがよくわかる。コイズミさんの訪朝が快挙のように当時大騒ぎされたが,出迎える北の様子から「全然問題だと思ってませんよ」という最大限の格下メッセージが出されていたなんて誰も解説してくれなかった。
情報の90%がガセネタとされる北朝鮮情報をいかに分析し,長い時間をつかって培った情報源を評価するか。批判はたやすいだろう。ただし,生命の危険を感じてまでのジャーナリスティックな姿勢は尊重せざるを得ないのである。