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    筋弛緩剤事件再考

    • 2006.03.25 Saturday
    • 18:05
    前回のエントリー筋弛緩剤事件控訴審について、元検弁護士のつぶやき(ヤメ検弁護士兼ロースクール教員の矢部善朗)の矢部氏から非常に重要なTBをいただいた。前回の記事を書いた関連サイトと矢部氏の見解及びasahi.comにおいて掲載されている「筋弛緩剤事件公判」の記録を比較してみると、「えん罪」であったかどうかについて非常に疑問を持ってしまったので、再考のうえエントリーしておくことにした。
    この裁判で問題になっているのは矢部氏いう「証拠開示の問題であり、取調べの可視化の問題」である。

    自白は自発的だったのか強圧だったのか


    自白に関しては報道ではかなり早い段階で自白していると検察は主張。
    公判で捜査員は「被告は、本格的な取り調べが始まって数分で『患者の点滴に筋弛緩剤を混入した』と認めた」と証言しているが、守君は「刑事に『お前がやったんだ』と何度も怒鳴られ、『じゃあ、間違ってやったのかな』という気持ちになった」証言する。そして守君は弁護士との接見後否認に転じるのである。

    自発的であれ強要されたものであれ、供述調書には「自白」されていることが書かれているということだが、わからないのは「自白」の強要なのか、「自白」後の犯行の供述が強要なのかである。これは些細な問題かもしれないが、「秘密の暴露」が無く、検察側ですら筋弛緩剤の投与方法などについて信用できないとしていることから公判ではもっと突っ込んで検証できなかったものか不思議に思う。もっとも、可視性のない取り調べ状況であるから検証自体が難しいのかもしれないが…。

    矢部氏も書いているが、今後裁判員制度が本格的に運用されるのであれば取り調べの可視性は重要である。このIT時代に未だ録画もされていないということは、普通に考えれば警察が「都合が悪くなる」ということであって、これが密室における取り調べの不可解さを煽り立てているような気がする。さらに言えば、以前ミランダ警告について触れているが、こういったことが示されていたとしたら、守君の自白はどうだったのか考えてしまうのだ。

    事件はでっち上げだったのか


    自白はともあれ、守君の弁護団の言うとおり「事件は全くのでっち上げ」なのかどうかについてである。公判記事をすべて読み終えての心証は「これほど大規模なねつ造は不可能に近いのではないだろうか」というものだった。最大の問題とされた物証=鑑定資料がすべて科捜研で消費されてしまい再鑑定ができないという点。これは鑑定の専門家の善意に基づいた鑑定によるものであり、この点を突いて「ねつ造」とするにはどう考えても無理がある。意図的に証拠を消滅させていたのだとしたら、検察の筋書きは完璧すぎる。次々と登場する検察側の証人をすべてマインドコントロールする、そんなことはありえない。

    155回に及ぶ公判のなかで、膨大な証拠調べ、証人喚問を実施してきたが、検察にはほとんどブレが見られない。反対に弁護側が鑑定書に押印があるかどうかといったことを取り上げ、状況が悪くなると取り下げしているといった検察ねつ造説をしきりに主張していることもわかった。物証の無い、状況証拠の積み重ねでの立証であったが、asahi.comの記録を見る限り「事件はなかった」というはずはない。少なくとも各患者からマスキュラックスが検出されているのは事実であるし、何者かが何らかの意図も持って投与したとしか考えられない。それを全てにわたって警察が行ったという合理的な論理は組み立てられるはずもない…。

    高裁への批判はどうか?

    さらに、控訴審がたった4回、4ヶ月。これは実際の数字であるが、このことについて矢部弁護士は
    …、仙台地裁の一審は2001年7月11日の第一回公判から2004年3月30日の判決公判まで約2年9カ月が費やされ、その間、証拠調べ期日が150回近く開かれています。
    これはかなり充実した審理が一審で行われたと言っていいでしょう。
    そして控訴審は期日こそ4回程度しか開かれていないようですが、1審の判決から2年近くが経過しており、その間仙台高裁において膨大な訴訟記録を精査していたものと考えられますから、仙台高裁の審理は必ずしも拙速とは言えないと思います。
    一部新聞等で報道されたスピード審理とは全く異なった感想を述べている。法律家の視点からこの控訴審を判断したもので、我々一般人にはわからないことを実に明快に説明してくれた。

    拙速なエントリーは素直に反省


    今回矢部弁護士からTBをいただいたことは、たいへんありがたいことだと感じた。いかに情報に接することが難しいのか、そして、ジャーナリストはどこまで求められているのかについて、たいへんい勉強になった。このような拙速なエントリーを公開したことについても反省せざるを得ない。

    「僕はやってない」とあくまでも無罪を主張する守君を、この弁護団はどこまでサポートしていけるのだろう。

    取調室の心理学

    • 2005.05.02 Monday
    • 16:19
    何人もいかなる刑事事件においても自己に不利益な供述を強要されてはならない


    ミステリーや法廷小説には必ずといっていいほど、決まり文句がある。
    あなたには黙秘権がある。あなたが述べたことは裁判であなたに不利な証拠となる。弁護士と相談することもできるし、取調べに弁護士を立ち会わせることもできる。自分で弁護士を雇うことができないときは、公費で弁護士を雇ってもらうこともできる。あなたはこれらの権利を放棄しますか
    かの有名なミランダ警告というもので、容疑者取り調べの前に必ず示されるもの。映画などで「弁護士を呼んでくれ」というセリフがよく出てくるが、これはミランダ警告を受けてのあたりまえのことのようだ。少なくともアメリカでは…。

    このミランダ警告は「ミランダの会」によると、1966年に確立されたものだが、日本ではビートルズ来日の年だ。いかに日本の取り調べが古い自白偏重主義に固執しているかよくわかる。

    悪いことをしていないのに、いくらなんでも「やりました」とは言わないだろう。一旦罪を認めておいて、裁判になったら「やってません」なんてふざけた容疑者だ。と思うのが一般庶民だ。報道も逮捕=犯人という調子で取り上げ、身辺を独特の取材方法で洗い出し、容疑者=犯人という先入観を人々にたたき込む。

    この本にも例があるが、日本での隠れた冤罪は数多く考えられるのではないか。長時間にわたる取り調べ、威圧的で確信に満ち、手を変え品を買えて容疑者の心理をゆさぶり続ける。場合によっては、捜査員が現場検証で犯行の様子を1から10まで「こうだったろう」と筋書きを書いていく。電磁的記録も無く、密室で行われる取り調べによる捏造を知る手だてもない。しかも、冤罪になった事件で取り調べをした捜査員については全くの御法度だ。

    突然あなたに襲いかかる警察の罠。捜査員の『証拠無き確信』により生み出された冤罪。それをまともに信じて容疑者の身辺を暴くマスコミ。評論家の犯罪要因分析。視聴率かせぎの格好の的となる連日のワイドショー。もうすでにあなたは犯罪者以外の何者でもない。

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